改正旅館業法が2026年6月15日に施行、1室から旅館・ホテル営業が可能に
2026年6月15日、改正旅館業法が施行された。最大の変更点は、ホテル営業に最低10室・旅館営業に最低5室と定められていた客室数の最低基準が撤廃され、1室から旅館・ホテル営業の許可取得が可能になったことだ。あわせて床面積要件の緩和(1室7㎡以上、ベッド設置時は9㎡以上)、フロント(玄関帳場)の条件付き未設置容認、ICTを活用した本人確認の正式追加も盛り込まれた。
民泊新法との違いと「1室通年営業」の意義
住宅宿泊事業(いわゆる民泊)を定める住宅宿泊事業法(民泊新法)では、年間営業日数が180日以内に制限されている。今回の改正旅館業法への移行で最も注目される点は、この180日制限から完全に切り離された365日通年営業が法令上明確化されることだ。
HotelBank(ホテルバンク)の分析によると、旅館・ホテル営業への切り替えによって期待できる効果は主に3点とされる。第一にOTA(オンライン旅行会社)上での表示カテゴリが「旅館・ホテル」に格上げされ、検索での視認性が向上すること。第二に施設名に「ホテル」「旅館」を冠せるようになりブランディング上の優位性が生まれること。第三に通年営業が法的に明確化され、住宅宿泊事業法の180日制限から外れることだ。
同分析では、1室営業解禁の恩恵を最も受ける投資領域として、ペット同伴特化型の小規模ヴィラ、ワーケーション・長期滞在型コテージ、地方の古民家ブティック旅館の3つが挙げられている。
宮城・東北への影響と宿泊税の新設
東北・宮城において民泊や小規模宿泊施設を運営する事業者にとっても、この制度変更は注目に値する。古民家や空き家を活用した「1〜3室の宿泊施設」が旅館業法の許可を取得することで、年間180日の日数制限がなくなり、安定した稼働設計が可能になる。特に温泉地や里山・観光農園エリアなど、訪日外国人旅行者や国内旅行者の需要が見込まれる東北各地では、新たな業態への転換機会となりうる。
一方、宮城県では2026年1月13日より宿泊税が導入された。1人1泊6,000円(税抜き)以上の宿泊に対し全県で300円(仙台市内は県分100円+仙台市分200円の合計300円)が課税される。旅館業法の許可取得を検討する際は、この宿泊税の収支計画への影響も考慮に入れる必要がある。
上乗せ条例への注意と自治体確認の重要性
改正旅館業法の規制緩和は全国一律に自動適用されるわけではない点に注意が必要だ。自治体独自の上乗せ条例が存在する場合、改正法の要件を満たしていても追加的な制限が課されることがある。東京都墨田区では2026年4月から「営業者の常駐義務・近隣説明会義務」が強化されており、豊島区でも2026年12月施行予定の上乗せ条例改正が進行中であることが確認されている。
東北・宮城で宿泊事業の新規開業や業態転換を検討する場合は、物件所在地を管轄する都道府県・市区町村の担当窓口(生活衛生課等)への事前確認が不可欠だ。住宅宿泊事業法に基づく届出か旅館業法に基づく許可申請かによって、手続き・要件・営業制限が大きく異なる。
民泊市場の現状:届出件数と稼働率
住宅宿泊事業(民泊)の市場に目を向けると、民泊制度ポータルサイトのデータを引用したBEST OF MINPAKU JOURNALによれば、2026年1月15日時点での累計届出住宅数は59,427件に達した。一方で廃業率は約37〜38%程度で推移しており、実稼働物件は約3.7万件にとどまる。業界推計では民泊の平均稼働率は2025年で約43〜45%程度とされており、改正旅館業法への移行によって通年・高稼働を狙う事業者が今後増加する可能性がある。
宿泊事業への新規参入や業態変更を検討している方は、民泊新法(住宅宿泊事業法)と改正旅館業法それぞれの制度特性を正確に把握した上で、事業計画を立てることが重要だ。
ご相談・お問い合わせはこちらから
お問い合わせする
