タイ内閣が60日間のビザ免除を廃止、93カ国が対象で30日以下に短縮へ
タイ内閣は2026年5月19日、外国人観光客に対して適用してきた60日間のビザ免除制度(P.60)を廃止することを決定した。対象となるのは93カ国・地域で、施行時期はまだ確定していないが、関係省庁への通達が行われる予定だ。
廃止決定の経緯
Bangkok Post(2026年5月19日付)によれば、タイ観光スポーツ大臣スラサック・パンチャロンウォラクンは、内閣決定の内容を明らかにし、「対象すべての国・地域は、60日間プログラム導入以前の入国規定に戻る」と述べた。制度の施行日については、引き続き協議中としている。
60日間のビザ免除制度は2024年7月に導入されたもので、新型コロナウイルス感染症後の観光回復を後押しする目的があった。しかしタイ当局は数カ月前から、この制度が意図しない結果をもたらしているとのシグナルを発信してきた。その主因として挙げられているのが、外国人が観光客として入国したまま違法に事業を営んだり、犯罪行為に関与するケースの増加だ。
新たなビザ区分と対象国
廃止後の枠組みでは、54カ国・地域に対して30日間のビザ免除(P.30)が引き続き適用される。ただし対象国数は従来の57カ国から3カ国削減される予定で、除外される3カ国は現時点では非公表とされた。また、モルディブ・モーリシャス・セーシェルの3カ国は15日間のビザ免除に限定される。
日本・韓国・台湾・シンガポールなどアジア主要国は引き続き30日間のビザ免除対象国に含まれる。一方、中国・香港・マカオ・韓国については二国間協定が別途存在するため、今回の措置の影響は受けないとされる。
タイの外務大臣シーハサック・プアングケトケーオ氏は、観光ビザにとどまらず、タイが発給するすべてのビザカテゴリーの枠組みを包括的に見直す方針も明らかにした。現在17種類あるノン・イミグラントビザのカテゴリーを7種類まで統合する計画も検討されている。
観光業への影響と「質の高い観光」戦略
タイ政府は今回の措置について、「訪問者の数より質を重視する」方針への転換と位置付けている。The Nation Thailand(2026年5月18日付)によれば、今回の改定による直接的な影響を受けるのは2026年1〜4月の外国人入国者総数のわずか0.7%に過ぎず、政府はマクロ的な観光市場への打撃は限定的だとの見方を示している。
一方で、長期滞在を希望する旅行者に向けた「デスティネーション・タイランド・ビザ(DTV)」は引き続き利用可能で、最長180日間の滞在が認められている。ビザポリシー委員会(外務省主導)が今後、国・地域ごとの適用区分を個別に精査していく予定だ。
観光客数の動向
タイの外国人観光客数は2026年5月17日時点で前年同期比3.3%減の1,290万人にとどまっており、前年の3,300万人からも7%減少した。国家経済社会開発評議会は、2026年通年の訪問者数をさらに下方修正し、3,200万人と予測している。カシコン研究センターも2026年の外国人入国者予測を3,000万人に引き下げており、ビザ制度の引き締めと国際情勢の悪化が重なるなか、タイ観光業は正念場を迎えている。
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