台湾の不法滞在外国人労働者が約9万4000人に、識者が正規化への法改正を提言
台湾で就労ビザを超過滞在したり、契約を離脱して不法就労状態に陥っている外国人労働者の数が、2026年5月時点で約9万4000人に達していることが明らかになった。この問題への対応策として、識者が関連法の改正による「正規化」措置の導入を求める論稿を発表し、注目を集めている。Taipei Timesが2026年7月9日に掲載した。
6年間でほぼ倍増した不法滞在者数
2019年11月に行政院(行政府)で開催された外国人労働者政策検討会議では、国家移民署(National Immigration Agency、NIA)が不法滞在の外国人労働者を約4万8000人と推計していた。それから6年余りが経過した2026年5月時点では、その数はほぼ倍の約9万4000人に達しており、このまま推移すれば来年には10万人を超えると予測されている。
こうした不法滞在者には、就労ビザの期限を超えて滞在するケースや、合法的な契約を離れて「逃亡労働者(absconding migrant workers)」として地下経済で働くケースなどが含まれる。これらの違反は、刑事罰ではなく行政罰(罰金等)の対象となるため、現行の「赦免法(Amnesty Act)」は適用されない。
スペインの正規化事例を参考に法改正を提言
論稿の著者で元公務員の蘇明通(Su Ming-tong)氏は、スペインが実施したような「正規化(regularization)」措置を台湾でも導入すべきだと主張する。具体的には、入国管理法(Immigration Act)と雇用サービス法(Employment Service Act)を改正し、不法滞在労働者が自主的に当局へ申告した場合に、行政罰を軽減・免除する仕組みの導入を提言している。
さらに、品行良好な記録を持ち、台湾人または台湾企業が身元保証できる者については在留許可の延長を認め、過去に入国禁止処分を受けた者には解除申請の機会を与えることも求めている。雇用主側の罰則も軽減・免除の対象とすることで、自主的な申告を促す狙いがある。
2019年に浮上した「強制送還見直し」論の経緯
2019年の政策検討会議では、当時の副大統領候補だった頼清德(William Lai)氏が報告を聞いた後、「品行良好であれば強制送還の必要があるのか」と疑問を呈し、不法滞在者が良好な行動を維持している場合には、そのまま在留・就労を認める案を示した。しかし、当時はこのアイデアが労働部(Ministry of Labor)や国家移民署に採用されることはなかった。
台湾が抱える労働力不足と政策の矛盾
台湾は急速な高齢化と少子化の進行により、慢性的な労働力不足に直面している。2026年3月末時点で台湾に滞在する合法的な外国人労働者は約87万3000人に上り、そのうちインドネシア人が37.3%、ベトナム人が33.7%を占める。一方、不法滞在者の増加は取締り強化でも抑制できておらず、労働市場の需要と規制の間に大きな乖離が生じていることが改めて浮き彫りになっている。
識者らは、現行の「取締り一辺倒」の政策では不法滞在者数の増加を止められないとして、現実的な解決策として法改正による正規化措置の検討を求めている。台湾政府がこの提言に対してどのような対応を示すかが今後の焦点となる。

