台湾、失踪外国人労働者への恩赦措置と法改正を提言、不法滞在の正規化議論が本格化
台湾の失踪外国人労働者問題:不法滞在者数はこの7年で倍増
台湾における失踪外国人労働者(正規の契約を離れ非正規経済に流入した労働者)の問題が改めて注目を集めている。Taipei Timesが2026年7月9日付で掲載した寄稿によれば、国家移民署(NIA)は2019年11月時点で不法滞在の外国人労働者数を約4万8000人と推計していた。それ以降、この数はほぼ倍増しており、2026年7月時点では約9万4000人に達していると報じられている(Taipei Times既報)。
寄稿者は元公務員の蘇明通氏であり、2019年11月26日に行政院で開かれた外国人労働者政策検討会議に出席した経験を持つ。同会議では当時副大統領候補だった頼清徳氏が議長を務め、強制送還の必要性に疑問を示したとされる。
「恩赦」と「正規化」への具体的な提言内容
寄稿では、失踪外国人労働者問題を解決するための具体的な手段として、現行法の枠内での対処ではなく、移民法(Immigration Act)および雇用サービス法(Employment Service Act)の改正を通じた制度的対応が必要だと主張している。
具体的には、次のような措置が提案されている。まず、失踪外国人労働者が当局に自首した場合に刑事罰を軽減または免除する「恩赦」措置の導入。次に、良好な品行を持ち、台湾の個人または企業が身元を保証できる者については、滞在許可の延長を認めること。さらに、かつて入国禁止処分を受けた者についても、禁止令の解除申請を可能にすること。そして、失踪労働者を雇用していた雇用主に対するペナルティについても軽減または取り消しの余地を設けることが求められている。
背景にある構造的課題:ブローカー手数料と劣悪な労働条件
台湾に来る外国人労働者の多くは、出身国のブローカーや仲介業者に多額の手数料を支払って渡航している。労働権利団体や国際機関の調査では、台湾での就労を確保するために5000〜6600米ドル相当を支払うケースも報告されている(Taipei Times既報)。
月額サービス料は法律上、初年度は1800台湾元を上限とする規制があるものの、違法な「就職斡旋料(job-buying)」の慣行は依然として根強いとされる。こうした過剰な費用負担が、労働者を正規契約から離脱させ非正規就労へと追い込む構造的要因のひとつとなっている。
「自首の道筋」が政策の焦点に
寄稿が強調するのは、摘発・強制送還という「追いかけっこ」の構造を変え、労働者が自ら当局に出頭できる「自首の道筋(pathway to present themselves to the authorities)」を制度として整備することの重要性だ。恩赦措置によって罰則の軽減や消去が可能になれば、現在地下に潜っている約9万4000人の不法滞在労働者の一部が正規化される可能性があるとしている。
台湾は少子高齢化による深刻な労働力不足を抱えており、外国人労働者は製造・介護・農業など幅広い分野で不可欠な存在となっている。失踪外国人労働者の問題は、単なる取締り対象としてではなく、制度設計の在り方を根本から問い直す課題として、政策立案者・研究者・市民社会から注目が集まっている。

