ミャンマー軍政がタイ在住移民のパスポートに「タイ限定」スタンプを無断で押印
タイに在住するミャンマー人移民が、就労証明書(Certificate of Identity=CI)を就労用パスポート(Passport for Job=PJ)に切り替えた際、新たに発行されたPJに「Passport for Thailand Only(タイ限定パスポート)」のスタンプが押されるという事態が発覚した。Irrawaddyが2026年4月29日に報じた。
事前通知なしに突然実施された制限措置
ミャンマー軍政の内務省は2026年4月下旬(木曜日)から、CIからPJへの切り替えを行ったパスポートに「Passport for Thailand Only」のスタンプを押し始めた。バンコクのビザサービス代理店のスタッフはIrrawaddyに対し、「CIから最近切り替えられたPJに押印されていることが確認できた」と述べた。別の代理店関係者も、軍政やミャンマー大使館からの事前通知は一切なかったと証言している。
タイのサムットサコーン県マハーチャイにある軍政のパスポート発行窓口でCIからPJに切り替えた人物が、「Thailand Only」と記されたスタンプが押されたパスポートの写真をSNSに投稿し、この問題が広く知られるようになった。
CIとPJの違い、そして制限の影響
CIとPJはいずれもミャンマー移民がタイで就労ビザや就労許可証を申請するために使用できる書類だが、その用途には違いがある。CIはミャンマー市民であることを証明するために移民や元不法就労者に発行される書類で、タイとミャンマー間の往来には使えるが第三国への渡航はできない。一方、PJはこれまで国際的な渡航にも使用でき、タイの就労ビザや就労許可証の申請にも対応していた。
しかし今回の措置により、「Thailand Only」のスタンプが押されたPJは事実上CIと同様の制限が生じ、第三国への渡航が不可能となった。あるビザ代理店関係者は「スタンプが押されたPJはCIと何ら変わらない」と述べた。さらにSNS上では、訪問用パスポート(Passport for Visit=PV)にも「Travel to Thailand only(タイへの渡航限定)」のスタンプが押されたとみられる事例も確認されている。
軍政の意図と移民への影響
2021年のクーデター以降、内戦・治安悪化・経済的混乱・人権侵害、そして軍政の徴兵制から逃れるために、多くのミャンマー国民、とりわけ若者が国外へ流出してきた。国際移住機関(IOM)タイ事務所の報告によれば、タイ国内のミャンマー移民の数は2021年のクーデック以降、360万人から400万人に増加している。
今回の「Thailand Only」スタンプ措置は、軍政が徴兵対象年齢の若者の出国を阻止する目的で海外就労許可の発行を制限するなど、移民の移動を制限する動きを強める中で実施された。Irrawaddyによると、軍政はタイ以外の国へ働きに出る男性への許可発行も2026年5月に停止しており、今回のパスポート制限もこうした一連の措置の一部とみられる。タイ在住のミャンマー移民の間では、この突然の制限措置に対する深刻な懸念が広がっている。
第三国への渡航・再移住の道が事実上閉ざされる
この措置が与える影響は多岐にわたる。タイ在住のミャンマー人移民の中には、より高い賃金や安全を求めて日本・韓国・中東などの第三国への転職・再移住を検討していた者も多いが、「Thailand Only」スタンプにより他国のビザ申請や渡航が事実上不可能となった。書類手続きを支援するビザ代理店業界にも混乱が広がっており、こうした措置の法的根拠や将来的な適用範囲についても不透明な状況が続いている。
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