インドネシアが大統領令で不就学児童64万5000人の復学目標を策定、2045年までにゼロを目指す
インドネシア政府は2026年、不就学児童(学校に通えていない子ども)問題に取り組む法的枠組みとして大統領令(Perpres)第3号を公布した。同令は不就学児童の発生防止と対応を目的とし、まず64万5000人の子どもを学校へ戻すことを当面の目標として設定。さらに2045年までに不就学児童ゼロを達成する長期目標も明記している。
不就学児童が直面する多様な背景
インドネシアにおける不就学児童の状況は一様ではない。一度も学校に通ったことのない子ども、途中で中退した子ども、1段階だけ修了して次の段階に進めなかった子どもなど、さまざまなケースが存在する。
南スラウェシ州パンケプの沿岸地域では、漁師の親に同行して長期間海上で過ごす子どもたちが、通学の機会を失うケースが報告されている。また、西アチェ州ジャンバク村のSDNアルエ・ロック小学校では、教室不足のため2026年6月5日にプレハブ構造物の中で試験が実施されており、インフラ整備の遅れが教育機会の格差を生み出している実態が浮き彫りになっている。
政府が打ち出す柔軟な学習形態
初等・中等教育省は、不就学児童の実情に応じた多様な学習形態を推進している。具体的には以下の方策が示されている。
- オープンスクール(開放型教育):通学困難な地域の子どもが自宅や地域で学べる仕組み
- 遠隔学習:オンラインや放送を活用した学習支援
- 同等性プログラム(パッケージ教育):正規学校と同等の資格が取得できる代替プログラム
- コミュニティ型インクルーシブ教育:地域ぐるみで障害や困難を抱える子どもを受け入れる教育
政府は、各家庭の状況や子どもの置かれた環境に応じた個別対応が不可欠だとしており、「席を与えるだけでなく、学びへの道筋を作ること」が政策の核心だと強調している。
奨学金プログラムと農村部支援の強化
就学機会の持続性を確保するため、政府はスマート・インドネシア・プログラム(PIP)と呼ばれる教育支援制度を通じて、脆弱な家庭環境にある子どもへの経済的援助を拡充している。特に、地理的条件や社会的課題が複雑に絡み合う3T地域(遠隔・辺境・後進地域)における支援の重点化が進められている。
東ヌサトゥンガラ州では、脆弱性の高い南中部ティモール県やクパン県に教育支援受給者が集中しており、より精緻なデータに基づく支援配分が実施されている。また、政府はデータシステムの改善にも取り組んでおり、支援が本当に必要な子どもへ確実に届く仕組みの構築を進めている。
「就学=貧困脱出」ではないという課題認識
一方で、専門家からは政策の枠組みに対する批判的な視点も示されている。単に教室への復帰を促すだけでは十分でなく、子どもたちが貧困から抜け出すためには質の高い授業・学習支援・その後の進学や就業への明確な道筋が必要だという指摘がある。
また、健康・栄養・家庭の不安定・住居・交通・デジタルアクセスといった教育以外の要因が就学継続に大きく影響しているため、教育政策単独ではなく省庁横断的なアプローチが求められているとの論点も提起されている。
インドネシアが2045年の「黄金のインドネシア(Indonesia Emas)」実現を目標に掲げる中、不就学児童問題への対応はその基盤となる課題として位置づけられている。
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